2016年12月12日月曜日

ハムハムデュエル 硫酸の溜まった落とし穴編

「わ、私のターン、ドロー……」

女デュエリストがカードを引く。1ターン前と違い、蚊の鳴くような声で彼女はターンを進める。

「ふん……先程までの余裕はどうしたのだ?」
「ううっ……ま、負けるわけには……」

女デュエリストの視界に、無残な姿となったホワイト・アーマー・ガールが映る。

もしデュエルで敗北すれば、私も―

女デュエリストは恐ろしい妄想を首を振って中断する。
そして、恐る恐るドローしたカードを確認する。

「!! これなら……!!」

女デュエリストの顔が少し明るくなる。

(ごめんね、ホワイト・アーマー・ガール。 あなたの無念、この子が晴らすわ―)

彼女の引いたカードは。

「私は、ホワイト・アーマー・ガールを生贄に
 ブラック・マジシャン・ガールを召喚!!」

ホワイト・アーマー・ガールの身体が光の筋となって消え、同時に拷問車輪が粉々に砕け散る。
そしてカードから光の渦が立ち上り、露出度の高い水色のローブを身に纏った可愛らしい少女が現れた。

「ほう、最上級魔術師の弟子か…そして、拷問車輪も同時に攻略したか」
「ホワイト・アーマー・ガールの敵、この子が撃つわ!!」
「フン、あの小娘を墓地に送ったのは貴様なのだがな……」

グールズはやれやれと言わんばかりに頭を振り、皮肉で女デュエリストを牽制する。
だが、女デュエリストの決意に満ちた瞳は揺らぐことはない。

「私は更に、装備魔法カードメテオ・ストライクを発動!!
 これをブラック・マジシャン・ガールに装備することで、貫通能力を得る!!」
『ふぅぅぅぅっ………はぁっ!!』

ブラック・マジシャン・ガールの周りに、穏やかで赤い光が渦巻く。
彼女がそれを杖の先に纏い、魔力を込めると光は激しく輝き出した。

「貫通効果……無理矢理にでもこのターン私にダメージを与える算段か……フフン」

余裕を見せるグールズに女デュエリストの怒りは更に高まる。

「…あの個と同じ苦しみを味わいなさい!!
 行くわ!! ブラック・マジシャン・ガールで、裏側表示モンスターを攻撃!!
 ブラック・バーニング!!」
『はぁぁぁぁっ……やぁっ!!』

ブラック・マジシャン・ガールの杖に、紫の光を湛えた魔力の玉が渦巻く。
彼女が叫ぶとそれは勢い良く発射され、次第に槍の形へと変化していく。
槍はカードごと、グールズの身体を貫き、彼は激しい断末魔を上げる―

かに、思われたのだが。

『えっ!?』
「な、何!?」

突然、魔力の槍はカードに届く前に光の渦のようなものに吸い込まれてしまった。
あまりの出来事に、女デュエリスト達は思わず狼狽する。

「罠カード・攻撃の無力化を発動した。ブラック・マジシャン・ガールの攻撃は無効化され
 バトルフェイズも終了する……ククッ、残念だったな」
「くうっ……!!」

悔しさをにじませる女デュエリストとブラック・マジシャン・ガール。
だが、彼女には他に打つ手も無かった。

「ターン、エンドッ……!!」
「私のターン……フフ、ではそろそろこちらから行くぞ」
「なっ……!?」

優位とは言え防戦一方だったグールズのその言葉に、女デュエリストは思わず身構える。

「まず私は魔法カード、浅すぎた墓穴を発動。
 このカードは、お互いに墓地から好きなカードを1枚選び裏側守備表示で特殊召喚する……
 私は、貴様に破壊されたゴブリン突撃部隊を裏側守備表示で特殊召喚する」

グールズの場に裏側表示のモンスターが1枚表示される。今度は女デュエリストの番だ。

「私は……ホワイト・アーマー・ガールを裏側守備表示で特殊召喚するわ……」

女デュエリストは墓地からホワイト・アーマー・ガールのカードを取り出し、渋々セットする。
ホワイト・アーマー・ガールは、守備力はたったの500ポイントしか無い。今攻撃されれば、安々と破壊されてしまう。
モンスターに無残な倒され方をする彼女の姿を浮かべ、女デュエリストは歯噛みする。

だが、女デュエリストを待ち受けていたのは彼女が想像するよりも遥かに残酷な光景だった。

「この瞬間……私はトラップカードを発動! 硫酸のたまった落とし穴!!
 このカードは、フィールド上に居る裏側表示のモンスターを一体選択し、表側表示にする……」

罠カードが浮かび上がると、ホワイト・アーマー・ガールのカードが裏返り
しゃがみ込んで身を守る彼女の姿がソリッドビジョンとして現れた。

『あれ!? わ、私……生き返ったの?』
「ククッ……『今だけ』な。 そして、裏返したモンスターの守備力が2000以下だった場合
 そのモンスターを破壊する!!」
「そ、そんな……
 !! な、何この揺れ!?」
 
突如地響きが巻き起こる。
そして、何らかの液体が泡立つ音も聞こえ始める。
二つは段々と大きくなり、そして……

『きゃぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「ホ、ホワイト・アーマー・ガールッ!!!」

ホワイト・アーマー・ガールの足元に、突然半径数メートルはあろうかという大穴が開く。
ホワイト・アーマー・ガールはその穴に飲み込まれるように落ちていき、大きく開脚した姿をグールズに晒す。

コンボが決まった喜びからなのか、それとも彼女のあられもない姿に反応したのかは分からないが…
グールズの顔は、邪悪な笑みに満ち溢れていた。

「!!、だ、だめ……!!」

そして、彼女の落ちる先には大量の硫酸が待ち受けていた。
それは深い緑色でとても毒々しく、激しく泡立ちしていることからとても強力な硫酸であることが伺える。
予想される惨劇に口を覆う女デュエリストだが、今の彼女にはもう出来ることはない。

そして―

『グギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!』

着水した瞬間、何かが激しく溶けるような音が響き渡り
ホワイト・アーマー・ガールは、とても年頃の少女とは思えないほどの汚い声で悲鳴を上げる。
そして、ホワイト・アーマー・ガールの身体は瞬く間に指先や足先の方から溶けてなくなっていく。

『あ……ああっ……』
「嫌あああアアアァァァァァッ!!!!」

ブラック・マジシャン・ガールは恐怖で引きつった顔でそれを見つめる。
女デュエリストに至っては割れんばかりの悲痛な叫びを上げ、両手で顔を覆ってその場にへたり込む。

『ギャア゛ア゛ア゛ッ!!! あ゛、あ゛づ゛い゛ィッ!! 
 が、がらだが、どげ、でっ、おげッ……』

溶けた身体からは湯気が立ち上り、それがホワイト・アーマー・ガールを襲う硫酸の強力さを物語っている。
やがて、彼女の汚い悲鳴がだんだん小さくなっていく。
既に脳味噌の半分が溶けてしまったのか、白目を剥き舌を出して嗚咽するばかりだ。
下半身は既に無く、上半身も僅かに浮かび上がった胸部しか残っていない。

『ア゛……オ゛……ゴブブッ……』

そして、頭部も徐々に硫酸の池に飲み込まれ消えていく。
最後に、肉が完全に溶けきったホワイト・アーマー・ガールの頭蓋骨が現れたが
それもすぐに硫酸により溶かされてしまった。

ホワイト・アーマー・ガールが完全に消滅すると、硫酸の溜まった落とし穴は元の地形に戻った。

「フフ…敵討ちと息巻いていたようだが、またしても貴様は彼女を救えなかったな」
「こんな……こんなのって……」
『ひ、酷すぎる……!!』

女デュエリストは顔を覆って無き悲しみに暮れ、ブラック・マジシャン・ガールは怒りのこもった目線でグールズの方を向く。

だが、女デュエリストの受難は、まだ終わらない。
さらなる責め苦が彼女を待ち受けているのだ……。

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今日はここまで
間隔が空いてしまいましたがお陰様で休日ゆっくりと過ごせました(オイ
次回はBMGがリョナられます。

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