2015年5月24日日曜日

ダブルハイレグ無残

オリボコ板で六輪廻さんという方が生み出したメリル・クロイツというキャラとハム子をコラボしてリョナってみました。
六輪廻さんといつもメリルさんを描いていらっしゃるなぞさんに多謝……!!

(↓ここから本編)
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「ハァ、早く帰らなきゃ……最近寝不足だし」

理知的、だがどこか少女の面影を残す声で呟きながら、真夜中の公園で一人の少女が家路を急いでいた。
彼女の名は、十 聖(となし ひじり)。またの名を魔法聖女 メリル・クロイツ。

彼女は危険な聖遺物・エメラルドグレイスにより被害を受けた者を救済する使命を負った17歳の少女である。
今日もエメラルドグレイスの反応があった男子校を調査すべく、自身の才色兼備を活かして女教師として任務をこなしていた。
女教師という身分を偽装するために履いた、慣れないハイヒールでの歩行と睡眠不足にやや苛立ちを感じながらも、彼女は帰宅を急いでいた。

(!!)

とその時、ふと気配を感じ聖は辺りを見回す。だが周囲に人の姿はなく、これといった足音なども聞こえない。

(気のせい、か…過敏になりすぎね)

聖はハイヒールの他にも、下着が透けて見えてしまう白いワイシャツ、スリットの入ったタイトなミニスカート、
更にガーターの付いた黒いストッキングを身に着けていた。
お陰で学校では普段女っ気のない場所に身を置く男子生徒の嫌らしい視線に苛まれ、不潔なものを嫌う彼女は周囲の視線にすっかり過敏になっていた。
これも身分を隠すため、我慢しなければ―聖は頭を振って再び歩き始める。

だがすぐに、聖は自分の感覚が正しかったことを知ることになる。

「痛ッ…!?」

突然、聖の首筋に痛みが走り、その理知的な顔が苦痛に歪む。
だが、直ぐにその痛みどころでは無くなってしまう。

「あ゛ッ……!!」

突然ガクン、と全身の力が抜ける。聖の身体はぐらりと揺れ、そのまま半身に倒れこんだ。
衝撃で眼鏡と、長い緑色の髪が地面に散らばる。

「あ゛う゛ッ……あ゛ひ゛ィ……ん゛ア゛ァ……」

聖のワイシャツに包まれた細い腕と、タイトスカートからチラつく尻、ストッキングで包まれた脚がビクン、ビクンと痙攣を始める。
青みが掛かった瞳は裏返り、震える口先からは舌と、大量の唾液が零れ出る。
足先にまで響く体の震えにより、聖のハイヒールは段々と彼女の足から離れていく。

「こち…第一班……麻酔銃を命……、無事捕獲……整えた……」

すると動けなくなった聖の耳に、逞しい男の声が途切れ途切れに聞こえてきた。

(だ……れ……?)

自分の身に起こったことより男のことを気にし始める聖だったが、
それを確かめるすべもなく、彼女の意識は闇に溶けていった。



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同時刻、とある都市の路地裏にて―

「がハッ!?」

夜遅くに制服姿のまま、路地裏で佇む少女が男に襲われていた。
男は拳を、制服の黒いブレザーとスカートの間から覗く少女の腹部にめり込ませる。

「……ぁ……」

少女は息を吐き出すと目を裏返らせてゆっくりと男の腕にもたれかかる。
男が腕を引くと少女は地面に沈んだ。衝撃で少女の赤茶色のポニーテールがふわりと揺れた後、少女の体はぐったりと動かなくなった。
その直後、男の携帯がなる。通話ボタンを押すと、逞しい声が聞こえてきた。

「こちら第二班。こちらも無事に捕獲準備を整えましたよ」

男は飄々とした口調で電話に答え、足元に伸びている少女の方に目をやる。
少女の名は、黒鷺 朱美(くろさぎ あけみ)―この近くにある月光館学園高等部に通う、先日17歳になったばかりの少女だ。
一見普通の女子高生だが、彼女は夜な夜な心の力・ペルソナを用いて戦う選ばれし者でもある。
今日は路地裏にあり、彼女にだけ見える精神と時の世界にてペルソナの強化に勤しんでいたが、そこを男に狙われたのである。
朱美の意識が精神世界から現実世界に引き戻されたのも、たった一瞬の出来事だった。

「こちらもあちらも上玉…これは楽しい見せ物になりそうですねぇ…ククク……」

今宵催される恐ろしいイベントに胸を躍らせながら、男は不敵な笑みを浮かべ、朱美の身体を抱きかかえた……。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「んっ……」

数時間後―先に目を覚ましたのは聖の方だった。
身体にしびれは残っていなかったが、頭はボンヤリとしているせいで起き上がるには少々の時間を要した。

(ここは、どこ……?)

起き上がった聖は、まず自分が居るの場所をベットの上だと認識する。
それから反時計回りに部屋を見回す―白銀に塗られた壁と低い天井、ドアはひとつ、調度品はロッカーが幾つか―
そして最後に目についたのは左手に見えるもうひとつのベット、そしてその上で半身に横たわる少女。

「この子は……?」

聖は横たわる少女を眺め、冷静に分析する―黒い制服とブレザー、足を包むハイソックス、自身と同じくらいの体躯から察するに、女子高生。
側頭部に『ⅩⅩⅡ』の形で埋め込まれたヘアピンが特徴的な、赤茶色のポニーテール。どちらかと言うと、自分とは対照的に活発な印象を受ける。
顔立ちは女である聖から見ても中々可愛らしい。

「でも、なんでこんな子が……?」

自分と同じ場所に寝かされたということは、恐らく彼女も何らかの事件に巻き込まれたのだろう。だが、彼女からは普通の女子高生という印象しか受けない。
単に女子高生を狙っているのか? でも自分はその身分を隠しているはず……。
などと、考えをまとめているうちに、聖の右側からドアノブが回る音がした。

「!!」

慌ててドアの方を向き身構えると、ドアの向こうから角刈りにサングラス、黒いスーツといういかにもな風体の男がやってきていた。

「……もう片方はまだか?」
「んうっ……」

男が言葉を発した直後、ベッドの上の少女から微かに声が漏れた。
そして、ゆっくりと少女のまぶたの奥から真紅の瞳が姿を現す。

「ここは……!? だ、誰ッ!?」
「落ち着いて、私は敵じゃないわ」
「えっ?………っ!?」

少女は聖と目が合うとガバっと飛び起きたが、聖は冷静に彼女を諭した。
少女はそのまま辺りをキョロキョロと見回すと、黒服の男を見つけ、顔をこわばらせる。

「十聖と黒鷺朱美、だったな……」

男は低い声でそう呟くと、ゆっくりと二人の方へ歩み寄る。
どうやら片端に居る少女の名は黒鷺朱美というらしい。
聖は冷静に問いただす。

「私、あと彼女の名前も知ってるなんて……あなた何者なの?」
「ある催しに従事するスタッフ、とでも言っておこうか……メリル・クロイツ」
「ッ!? な、なぜその名前をッ!?」

裏の名前を言い当てられ、聖は思わす狼狽してしまう。
朱美は二人のやりとりを、訳が分からなという様子で目をパチクリさせながら眺めている。

「今からお前たちには、リングの上である男と2対1で戦ってもらう……
 逃げようなどとは思うな……警備体制は万全だ。生きてここを出たくば勝ってみせろ」

男の身勝手な言い分に、正義感の強い聖は激昂する。

「ど、どうしてそんなことをしなければならないの!? この子まで巻き込んで!!」
「壇上に上がれば分かる。俺の仲間の口煩い男が説明してくれるだろう……」

男は淡々と返すと、親指でロッカーの方を指した。

「黒鷺朱美、お前の戦闘服はそちらに入っている。必ず着替えてから来い。
 メリル・クロイツの方は……自前で変身できるはずだな。そちらもそれを済ませてから来い」
「へ、変身のことまで……!?」
「我々は催しのためなら調査を怠らない……そこの黒鷺朱美はペルソナ使いだったな」
「え、なんで知っているの!?」

聖も朱美も、自らが普段公にしていない、いや出来ない正体をを次々と言い当てられ動揺する。

「お前達の住処や周辺人物も割り出せている……下手な行動は慎むことだな。
 ドアを出て左へ行けばステージがある。試合は30分後だ。では、待っている。」

男は必要なことだけを告げると、踵を返して部屋を出て行ってしまった。

「……何者なの、一体……」
「えっと……くろいつさん、でしたっけ?」

聖が思案していると、朱美がおずおずと話しかけてきた。

「……本当の名は十聖……いや、もうメリルでいいわ。
 あと敬語じゃなくていいわよ。同い年みたいだし」
「えっ……そんな先生みたいな恰好なのに?」
「これは、ちょっと事情があって…本当は高校生よ」

聖―いやメリルは淡々と、だが警戒を解くために顔を緩めて、朱美の質問に答える。そして逆に質問をした。

「あなたも、戦えるの?」
「あ、えっと、うん。ペルソナっていうもう一人の自分を呼び出して、その力で戦うの。
 ……あ、私の名前言ってなかったね。私は黒鷺朱美、よろしく!」
「ふふ、よろしく黒鷺さん」

二人はお互いに手を差し出し、笑顔で握手を交わす。

「それで……そのペルソナというのは、召喚魔法みたいなものかしら?」
「んー、まあそんな感じかな。メリルさんは?」
「私は、えっと……あんまり人前で話したくはないのだけれど、メリル・クロイツというその……魔法、聖女になって戦うの」

メリルは魔法聖女、という恥ずかしいフレーズを出したことで呆れられるかと思っていたが、朱美の目は逆に輝いていた。

「すごい……テレビの中だけじゃなくて、本当に居るんだ、そういう人……」
「あ、ありがとう……私も最初は信じられなかったけれど……」

メリルが照れながらそう話すと、ロッカーの方へ顔を向ける。

「あの中に、あなたの装備が入ってるのね?」
「うん、そうそ……!!」
「どうしたの?」

突然ハッとした表情をする朱美に、メリルは驚いた。

「えっと……その、戦闘服なんだけど、結構、人前じゃ恥ずかしいというか……」
「そ……そうなの? まあ、私も人のことは言えないんだけど……
 じゃあこうしましょう? お互い、着替えの時だけは姿を見ないってことで……」
「う、うん! そのほうが助かる……」

朱美はあっさりメリルの提案を受け入れる。そして二人はお互い、ロッカーの前と部屋の隅へ別れ背を向けて着替えることとなった。

「ハァー、やっぱりこれだったか……」

朱美はロッカーの中装備をを見て、重い溜息をついた。
彼女の装備はハイレグアーマー。銀色の胸パッドと白いハイレグの鎧で必要最低限な部分だけ覆った胴部に、
銀色に輝く金属の覆いが付いた白い長手袋、同じく覆いと、銀色のハイヒールが先についた白いサイハイブーツ、
そして、それぞれ首と頭を防護する鋼鉄のチョーカーとカチューシャで構成されている。

朱美はちらと後ろを振り返り、部屋の隅に居るメリルの方を見る。彼女は壁のほうを向いて何やら呟いているようだ。
それを確認すると、朱美はブレザーを脱ぎ、リボンを外し、ブラウスとスカート、ソックス、そして下着と次々と脱いでいく。
そして一糸まとわぬ姿にハイレグ型の鎧を付け、ブーツを履き、手袋をはめ、仕上げにチョーカーとカチューシャを付けた。

「まさか、これを人前でやるなんてね……」

一方、メリルの方は懐に隠してあった校章(正体は魔法杖だが)を取り出すと、その場でくるくると踊りだす。
すると、淡いエメラルグリーンの光が彼女の身体を包みこむ。彼女のワイシャツが、タイトスカートが、ガーターストッキングが、そして下着が―溶けるように消え、先程の朱美と同じように全裸となる。
やがて校章は2つの藍色の珠が付いた魔法杖の形を取り、フリルの付いた白いレオタードが、白い膝丈のブーツが、紫色の短いオープンフィンガーグローブ、そして膝や肩、頭を覆う紫色で十字架の刻まれたプロテクターが次々と彼女の身体に装着される。
こうして―十聖は魔法聖女 メリル・クロイツと変身を遂げた。

「あー……終わった?」
「え、ええ。」

彼女らはそう言うと、互いに顔を見合わせた。
白を基調とした衣装に露出した肩、太腿、臀部…差異はあれど二人の衣装には共通点も多かった。

「メリルさんのも、なんかスゴイね……」
「あ、あなたも中々よ……ま、まあこれから戦うわけだし、こんなことで挫けてはいられないわ」
「そ、そうだよね!」

お互いに複雑な顔をしながら喋っていると、突然天井の方からアナウンスが聞こえてくる。
声は、先ほどの黒服のものだった。

『どうやら着替えは済んだようだな。予定より早いが、試合を始めてしまうぞ。早く上がって来い』

それだけ告げて、アナウンスは鳴り止んだ。

「ま、まさか着替え見られてる……!?」

顔を紅潮させてうろたえるメリルに

「もう、気にしたら負けよ……戦いにも、絶対に負けられないわ。
 あんな卑劣な奴らは許せないし、それに、私達の大切な人のためにも」
「……!!」

『お前達の住処や周辺人物も割り出せている……下手な行動は慎むことだな。』

メリルも朱美も、先程の男の言葉を思い出していた―負ければ、自分達が危険な目に遭うだけでは済まない。
それぞれ学校で関わった、大切な友人達を思い浮かべながら自らの瞳を決意の色に染めていく。
もはや彼女達は格好に恥じらう乙女ではなく、立派な決意を宿した女戦士の顔になっていた。

「…行こう、メリルさん!」
「黒鷺さん、よろしく頼むわ!!」

お互いに顔を見合わせそう言うと、彼女達は直ぐに部屋を出て廊下を駆け出した。
一刻も早く、不届き者どもが待つ試合会場へ赴くために。



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会場を訪れたメリル達が見たものは、割れんばかりの歓声、眩しすぎるほどに照りつけるライトが作り出す異様な空間―
目の前には観客席で挟みこまれた、固いクッションで作られた道。その先には、ボクシングやプロレスでお馴染みのリングが置いてある。
奥には、会場に点在するカメラから出力される映像を映し出す大型スクリーンが置かれており、様々な視点から空のリングが映しだされている。
呼ばれるまで入り口で待つように指示されたメリル達は、近くの観客席から全力で嫌らしい視線を注がれていたが、試合への決意を固めていた彼女達は気にもしない。

「……黒鷺さん、ちょっといいかしら?」

メリルは、朱美の方へ耳打ちする。

「何?」
「あなた、ペルソナで身体能力を強化するということはできるの?」
「できるけど……どうして?」

朱美が問うと、メリルはリングの方を小さく指差す。

「あれ、格闘技のリングよね……何か、嫌な予感がするの。
 試合が始まったら、お互いに身体能力を強化しましょう。魔法に頼らなくてもいいように」
「わ、分かった……」

朱美が頷くと、お喋りは終わりとばかりに会場に飄々とした声のアナウンスが響きわたった。

「さぁー皆さん本日もやってまいりました!! 我がWREが贈るビッグ・マッチ!!!
 本日もかわい~い女の子を取り揃えて見事開催に漕ぎ着けました!!!」

アナウンスに会場全体が湧き、観客たちの歓声はより一層厚いものとなる。この会場で渋い顔をしているのは恐らくメリルと朱美の二人だけだろう。

「それではッ! 本日の挑戦者はこの方ッ!!!
 世のため人のため、この世の悪と戦う正義の女子高生コンビ!!!
 魔法聖女のメリル・クロイツちゃんと、心の力・ペルソナ使いの黒鷺朱美ちゃんだァーーーーーーーーーッ!!!!!!」

高らかに二人の名が叫ばれると、カッという音と共に二人へスポットライトが当たる。
更に艶かしい姿の二人がスクリーンに映しだされると、会場は更にヒートアップの様相を見せる。
当然、二人はアイドルのように可愛らしく声援に応えるわけでもなく、笑顔も見せずただ真っ直ぐにリングの方へと歩いて行く。

「さあ皆さんご覧下さいッ、白くてセクシーで、それでいて清楚な格好のこの二人!!
 ……このあと無様な姿になるかもしれないと思うと、ゾクゾクしちゃいますよねェ!?」

司会の男は前半は朗々と、後半は声を低くして叫び、会場を大いに湧かせる。
盛り上がる観客の様子をメリルは溜息を付いて俯きながら、朱美は眉を吊り上げて怒りながら眺めていた。

「さてさて、皆さん待ちきれないという様子なので早速対戦相手をお呼びいたしましょう!!
 では……神城ソウジ君、カモン!!」

司会がパチンと指を鳴らすと、メリル達が入ってきた方向とは逆から車椅子に乗った男子が運ばれてくる。

「え、あれが対戦相手……?」

車椅子に乗った男子が、二人の男の手によってリングの上に運ばれる。
その男子は、まるで薬漬けの廃人のように眼や口をだらしなく開いて、脱力しており試合どころかまともに立って歩くことすらままならなそうだった。
だが、朱美の方はというととても驚いた様子で、

「か、影人間……!?」
「!? 知っているの?」
「うん、私達が戦っているシャドウって化物に、普通の人が襲われると
 精神を食われてああなっちゃうの…… しかもあの制服、私の学校のだ……!!!」
「なんですって……!? でもなんでそんな状態の人を連れてきたのかしら……
 !! まさか!」

何も戦闘能力のない人間が、突然凄まじい力を手に入れる―
車椅子の男の手には、メリルがよく知っている『あの宝石』が握られていた。

「エメラルドグレイス!!」
「え、何それ?」
「さ、そこのキミ!! YOUの欲望を解放しちゃってチョウダイ!!!!」
「や、やめなさい!!」

メリルは慌てて駆け寄ろうとするが、間一髪、遅かった。男子生徒の身体が凄まじい閃光に包まれる。

「きゃっ!!」
「くっ…間に合わなかった……」

光はより一層輝きを増し、男のほうからは肉体が意思を持って蠢いているような気持ち悪い音が聞こえ始める。
男の筋肉は膨れ上がり、背中からは触手のようなものが何本も生え始める。

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!!」

先ほどの無気力な様子からは想像できない雄叫びを上げて、男子生徒―神城ソウジだったものは変身を終えた。
やがて、光は小さくなりソウジはゆっくりとその姿を表した。

『ククク……素晴らしい……身体に力が漲るぞ!!!
 生まれ変わった俺の力……お前達を屈服させられるかどうか、早速試してみるかぁ!! フハハハハハ!!!!』

ソウジは茶に変色した筋骨隆々の身体を眺めながら言った。
顔も先ほどの覇気のない様子からは想像もつかないほどの形相となっており、最早人間の原型をとどめていないほどに目は細く釣り上がり、エメラルドグリーンの不気味な光を放っている。
口からは二本の鋭利な牙が生え、筋肉溢れる身体からは吸盤のついた触手が背中に何本も生えている。
腰には褌を締め日本刀を腰からぶら下げているが、そんなものは飾りだと言わんばかりに、ソウジはそれをへし折ってしまった。

「ゆ……」
「許せない………!!!」

一方メリル達は、守るべき人々がこんな残酷な仕打ちに晒されていることを目の当たりにし、激しい怒りを覚えていた。

「黒鷺さん……絶対勝つわよ!!!」
「うんっ……!!」

絶対に、負けられない―彼女の心に去来したものは一緒だった。言葉をかわした瞬間、試合のゴングも高く鳴り響いた。
朱美はペルソナの召喚器を頭にあてがい、メリルは魔法杖を高く掲げる―

「ベストフレンド!!!」

朱美が叫ぶと、ヒトデとエイの形をした怪物たちが現われ、朱美の身体を暖かな光で包み込む。
そして、朱美は自分の身体に力が湧き上がるのを感じていた―筋力、瞬発力が引き上げられ、攻撃、防御、スピード、全ての能力が引き上げられる。
その証としてか、彼女の身体は金色のオーラに包まれる。

「はあぁ……ッ!!」

一方メリルも魔法中のエネルギーを身体に注ぎ込み、変身によって強化された脚力、防御力、知能を更に万全なものとする。
彼女もまた、朱美とは対照的な銀色のオーラを放っていた。

『小癪なぁ!!』

だが、ソウジは冷静だった。彼は触手を彼女らの手を目掛けて勢い良く伸ばす。

「くっ!!」
「あっ!!」

召喚器と魔法杖が、彼女たちの手を離れ観客席の手前にあるマットへと落ちてしまう。

『クク…これで力は使えまい。一巻の終わりだな』
「それはどうかしら?……やあぁッ!!!」

だが一方、対するメリルはもっと冷静だった。この展開をある程度予想した彼女は、強化された脚による回し蹴りをソウジの胴目掛けて放つ。

『ぐふぅ!?』

その破壊力は、ソウジの鍛えあげられた肉体をへこませるほどだった。魔法杖は消えても、強化した身体能力は消えないのだ。
メリルの読みによって一杯食わされたソウジは、顔に動揺の色を滲ませる。

「せやぁぁぁぁぁ!!!」
『!! うごぉう!?』

今度は、朱美の放った強烈なストレートがソウジの顔面を捉え、口から唾液を飛び散らせる。

『ぐぐっ……うあぁっ……!!!』
「ふぅ……あなたたち、よく聞きなさい。こんな茶番はもう終わりよ」
「ぐぬぬぅ……!!」

ソウジがうずくまったのを確認すると、メリルは観客席に向かって冷めた様子のを放つ。
朱美の方もどうだと言わんばかりに腕組をしながら、観客席の方を眺めている。
騒がしかった会場は静まり返り、司会者の悔しさを滲ませた声が会場内に響く。

「さあ、朱美さん、とどめよ! 次の一撃で目を覚ますはず!!」
「よしきたっ!!」

とどめを刺さんと、メリルと朱美はそれぞれ反対を向きながらワイヤーロープの方へと走りだす。

「ハアァァァァァァッ!!!」
「ウオォォォォォォッ!!!」

ぐにゃりと曲がったワイヤーロープの反発を利用して、彼女らはソウジを挟撃せんとした。
ソウジはよろめきながらも何とか立ち上がっていたが、凄まじい勢いで駆け寄る彼女らを避けることなど到底出来そうもない。

と、この瞬間は誰もが思っていた。

『フフッ……』

ソウジ一人を、除いて。

『おりゃああああああああああああああッ!!!!!!!!!!』

屈伸し、遥か上空へ飛び上がる―この動作をソウジは、コンマ一秒のうちにやってのけた。

『フハハハハハハ!!!!』
「なっ!?」
「し、しまっ……」

すんでのところで目標に逃げられる二人。
先ほどのやられぶりは演技だったのか?そう思う間も、減速する暇も彼女らには与えられなかった。

「オ゛ッ!?」
「ア゛ッ!?」

メリルと朱美は、思いっきり正面からぶつかってしまう。朱美のハイレグアーマーの胸甲にメリルの胸は押し潰され、メリルの脚が朱美の股間を強打する。

「オ゛ッ……オ゛ォッ……!!」
「ンア゛ァッ!!!………ア゛ァ………」

メリルは激しく痛む胸を抑えうつ伏せに、朱美は股間を抑えながら仰向けに倒れこんだ。
強化された身体能力が仇となり、ぶつかり合った力はお互いの急所を著しく傷つけていた。
地を転がり、苦悶の表情を浮かべながら喘ぐ二人の姿は大きなスクリーンに映し出され、お通夜状態だった会場が再び活気を取り戻す。

『まだだ……もっと傷付け合ってもらうぞ』
「くはっ!」
「ひゃうっ!?」

ソウジはリングマットを触手で叩きつけ、二人の体を宙に浮かせる。
そして、浮いた二人の体を別の触手で巻きつけ、持ち上げる。

「な、何をっ……!!」
「は、離せぇ……!!」

まだ痛みが残る身体を必死でバタつかせるが、二人の身体に巻き付いた触手はびくともしない。
そして、ソウジはそれぞれの触手を大きく振りかぶり―激しく叩き合わせる。

「がぶっ!!」
「ぶべぇ!!」

すると、メリルと朱美の顔面が正面からぶつかりあった。
互いの鼻骨に大きな衝撃が走り、二人の液体から赤いものが滴り落ちる。

「がっ……あっ……」
「も、もうやめ……」
『クハハハ……どんどん行くぞぉ!!』

今度は触手がねじれ、二人の体が宙吊りになる。

「や、やめ……げほぉあ!!」
「がふぅあ!!」

二人は背中合わせにぶつかり合い、激しく噎せ返る。
朱美の剥き出しの肩甲骨のラインに大きな痣が広がり、メリルの背には朱美がつけている金属のブラが喰いこんだ後がくっきりと残っていた。

『どうだぁ、味方の身体に傷つけられる気分はぁ!?』
「あごぉっ!? お゛っ、お゛うっ……」
「ぐぶぅあ゛っ!? あ゛う゛っ、んア゛ァ………」

更に、朱美の脚がメリルの頭部に、続いてメリルの脚が朱美の頭にぶつけられる。
頭部に大きな衝撃を受け、二人の意識がスッと飛びそうになる。それを裏付けるかのごとく、二人の目は白目を剥き始めていた。

「ほお゛ぉう゛っ、ご、ごんなどごで……」
「あ゛う゛ぅ、まげで、だまるがぁ………」

それでも、二人は気丈に意識を保っていた。眼から涙がこぼれ、顔が腫れ、鼻血を垂らし―女子高生にあるまじき無様な姿となっても、
そんな姿がスクリーンに映し出され、会場内から笑いが湧き上がったとしても、彼女たちは諦めなかった。
もし、ソウジが疲労し触手から一旦開放されるとしたら、その時―反撃のチャンスは訪れる。

『ほう、まだ耐える余力が残っているとは……だが無駄だ無駄だァ!!!』

だが、ソウジの体力はまだ残っていた。いや、正確には彼は強化された彼女らの肉体を利用して攻撃しているにすぎないので、
少ないスタミナ消費で相手に大きなダメージを与えることができているのだ。

「ごほっ! がうっ! うあっ! うああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「げふぅお゛!? ごふぅ!? うぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

それを誇示するかのごとく、ソウジは触手を激しく動かし彼女らの身体を無茶苦茶に叩き合わせた。
お互いの頭が、肩が、脚が、顔が、身体の至る所がぶつかり合い、全身がどんどん痣だらけになっていく。
意識を朦朧とさせていた彼女らの口から、大きな悲鳴が絞り出される度に会場は大きく湧き上がり、司会の男の実況もヒートアップした。

「う………うぅ……………」
「………ぁ…………………」

30秒程すると、メリルも朱美も露出した肌の部分がことごとく赤黒く染まるほどの酷い有様となっていた。
目は僅かしか開いておらず、誰がどう見ても満身創痍な状態なのは明らかで、身体を包むオーラもかなり弱々しいものとなっていた。それがまた、会場をより一層盛り上がらせる。

『ちっ、ちょっと力を使いすぎたか……』

と、ここでソウジも息を切らし、足がふらつき始める。
いくら使うスタミナが少ないとはいえ、調子に乗ってまだ慣れきっていない身体を動かしたので、流石に疲れてしまったのだ。

だが、突然メリルに巻き付いていた触手が解かれる。

「あっ……」

メリルの身体が開放され、リングの上で仰向けに転がった。
久方ぶりに開放された彼女は、軽く地面を転がるだけでも激痛を感じるほどのダメージを受けていた。

(ま、まだ……うごけ、る………)

それでも、落ち着いて状況を見る。ソウジは流石に疲れてしまったのか、肩で息をしたまま動かないでいる。
まだ魔法杖が、リングの外へ残っている筈。そうすれば残りの力で魔法を放ち、勝つ見込みがある。

「ぐぐっ………」

傷ついた身体に鞭打ち、なんとかメリルはリングの外へ転がろうとする。

(メリルさん……私のことはいいから、杖を……!)

一方、縛られたままの朱美もぼやけた視界の中で、メリルの動きを見ていた。

「んっ……くあぁっ……」

彼女もボロボロの身体を、激痛に悶えながらも必死でよじらせ、ソウジの注意を引こうとする。

だが、ソウジは彼女たちが考えているより中々根性のある男であった。

「うおりゃあああああああああああああっ!!!!!」
「!?」

彼は、朱美の身体を再び高く持ち上げ、触手をねじり逆さにくるんと裏返す。

「あうぅ……」
「あ、朱美さん……っ!」

メリルは朱美の身体を案じるが、今の彼女ではどうすることも出来ない。
魔法杖の確保を優先し、彼女はなんとか上体を少しだけ起こし、動こうとしていた。

だが、ソウジの狙いはメリルの方だった。

「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!!!」
「!! う、うそっ……!!」

ソウジはメリルの身体目掛けて、朱美の身体に振り下ろす。
動きの鈍いメリルは当然避けることも出来ず、金属のカチューシャを被った朱美の頭が、メリルの腹部に直撃する。

「ぐぶぅお゛う゛お゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!!!!!!!!!」
「ん゛ン゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!」

カチューシャによって威力が増大した朱美の頭がメリルの腹部へと深くめり込む。メリルの口から吐瀉物が噴水のように撒き散らされ、衝撃で手足が上へと攣り上がる。
一方朱美の方も凄まじい衝撃を受け、女子高生のものは思えないほどの凄まじい叫び声が喉の奥から搾り出された。
そして―彼女たちの限界を示すのかごとく、身体を覆っていたオーラが完全に消えた。

『……っとと。さ、流石に限界近いな……はは、でもコレでもう動けねぇだろ』

ソウジの触手から朱美も開放され、ごろりと床を転がる。ソウジはそれで安堵したのか、マットの上へ座り込んで倒れた二人の様子を眺めていた。

「ごぶっ、ごぼっ、かふっ……」

メリルは体をビクビク震わせて、未だに口から血反吐混じりの吐瀉物を撒き散らしていた。
撒き散らされた吐瀉物が、顔と、白いコスチュームを汚らしい色に染め上げていた。
股間の方には吐瀉物が届いていない代わりに、黄色い染みがじんわりと広がっている。

「ウ゛ア゛ァッ……ぁ……」

一方、頭部と首の神経に重大なダメージを負った朱美はその体を激しく痙攣させていた。
触手から開放されて仰向けに転がったかと思うと、いきなり左半身を攣らせ頭部を支えにしながら身体がエビ反りにし、脚がガニ股に開く。
しかも身体を反らせた瞬間、ハイレグの股間から噴水のように黄色い尿が溢れ出てしまう。この瞬間はスクリーンに映し出され、観客は大いに爆笑した。
エビ反りが終わったあとでも痙攣は小刻みに続き、白い手袋とブーツに包まれた肢体もガクガクと震えていた。

「KO!!!!!!!完全なるKOです!!!!
 いやあ、一次はどうなることかと思いましたが、見事ハイレグの天使たちの無様な姿が見れましたね!!!」

二人が白目を剥き完全に失神したのを確認すると、司会者は会場の方に出てきて観客たちに語りかけた。

『おいおっさん、もういいか。ちっと疲れちまったんでな……』
「え、そうですか。でももう少し働いていただければお給金弾みますけど……」
『ん? 本当か?』
「ちょっと会場を盛り上げてくれるだけでもいいんで……」
『そうかい……しゃあねえな。』

そう言うとソウジは未だに痙攣を続ける朱美の身体を担ぎ、メリルの方を足で蹴ってうつ伏せの体勢にする。
リングを転がったことで、メリルの全身にまんべんなく吐瀉物が付着してしまった。

『おらっ』

ソウジはグチャグチャに汚れたメリルの背に、朱美をうつ伏せの状態で乗せた。
そのまま彼女らの横へ行き、緑と赤茶色の髪を手でひっつかんで宙ぶらりんの状態にする。

『なんか嫌な感触すんなぁ……まあ我慢我慢』

手を襲うべたついた感触に嫌悪を示しながらも、ソウジは二人の身体をまるごと包むように触手を巻かせた。
そして―それを持ち上げ、背中合わせになった彼女らを観客が間近で見えるように、触手をリングの外へ伸ばして見せた。

『よしお前ら、じっくり鑑賞しやがれ!!』

数十分前まで純白の天使だった彼女らが、ただの汚物の二人と成り果てた姿を間近で見ることの出来た観客たちは興奮した様子で次々と声を上げる。

「ギャハハハハハハ!!!何だあれwwww」
「きったねーなぁオイ!!!」
「うぉ、ちょっと、こっちにおしっことゲロかかってきたんですけど!!!!」

あるものは笑いながら、あるものは怒りながら宙を浮く彼女らを眺めていた。シャッターを切る音も鳴り止まない。

メリルと朱美は体を震わせ、汚物を撒き散らし、
何の抵抗の出来ないまま、白目を向いた無様な姿を晒すしかなかった……。

―おわり―


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(↑ここまで本編)

【あとがき】

如何だったでしょうか? せっかくのコラボなのでお互いの身体をぶつけてリョナるという謎の発想で書きましたが……
ものすごく急いで書いたので色々と盛り込み不足ですが……ちゃんとリョナる側の相手を想像させられているだろうか…それが不安(というわけでこれは下でちょっと補足を)
あと一応色々研究させてもらいましたが、メリルさんのキャラコレでいいんだろうか……分析能力とか全く出せてませんねすいません
あと無気力症患者はエメラルドグレイスを発動させられるのだろうか……
でも、始めてメリルさんを書けたのは嬉しかったです 前から好きだったオリキャラさんなので…!!

【今回のアイデア元】


変異後ソウジくんのグラはこんなかんじをイメージしてます



この技そのまま、というわけではありませんがこのキャプから今回のトドメと痙攣ポーズを思いつきました(画質悪いのはご了承を。あと技は上そのままというわけでもないですね、ハイ)
とりあえず前回の記事に引き続き鉄拳の仰け反りはエロいということを言いたかった。
というかこのアリサのコス的にメリルさんにさせるべきだったのではちょっと後悔…orz

最後に、重ねてになりますがキャラを使わせていただいた六輪廻さんと、中間連絡をしていただいたなぞさんにはこの場を借りてお礼申し上げます。
あと最後まで読んでくれた方もありがとうございました!

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